・遺伝子操作された農産物とは

 人類は農業を始めて以来、植物をより利用しやすくなるように、品種改良を重ねてきました。

 たとえば、量が多く、味の良い株をえらんで種を残し、何代もかけ合わせる方法です。

 この方法では、例えば小麦の遺伝子の中に他の生物の遺伝子を組み込むことはありません。

 ところがタバコの遺伝子の中にタバコに感染して枯らすウイルスに対して抵抗性をもつ細菌の遺伝子を人工的に組み込んで、このウイルスに病気に感染しにくいタバコを農作物として栽培することが始められました。

 これは1980年台に米国で始まり、タバコの原料として出荷されました。

 この時から、様々な農作物に別の生物の遺伝子を人工的に組み込んで、収穫量の多い品種や 病気・害虫・除草剤に対して強い品種が開発され、商業的に栽培され続けています。

他生物の遺伝子が組み込まれた農産物の何が問題なのか

 これらの、他の生物の遺伝子を人工的に組み込まれた農産物の何が問題となるのでしょうか。

  1. 生態系への影響

 他生物の遺伝子が人工的に組み込まれた農産物(これを‘遺伝子操作作物‘といいます)のうち、 除草剤に強いものは、多くの場合、化学的に合成された除草剤とセットで販売されています。

 遺伝子操作作物は大量の除草剤を散布しても枯れないので、農家はより大量の除草剤を まくようになります。

  するとこの影響で近くの農作物や植物、昆虫が被害を受けるようになって しまいます 。

 また、以前よりも大量の除草剤が地下水に浸透し、がんの発生率が2倍以上になった例も報告されています。

  • 遺伝子操作作物の変化が予想できない

 大量の(または影響の強い)農薬を散布した結果、以前からいた植物や昆虫に代わって農薬の効かない種が増えてくる場合があります(“これを薬剤耐性を獲得する“といい、医療の現場などで問題になっています)。

 このような変化は予測することが難しく、またいったん変化が起こると対処が非常に困難です。

  • 導入された遺伝子の性質は、完全に分かっている訳ではない

 遺伝子操作作物は、ある遺伝子の持つ‘望ましい性質’を農作物に加えるために作られます。

 しかし、本当にその遺伝子が、着目されているある’望ましい’性質’だけに関わっているかどうかは、現在の最新の科学でもまだ正確に知ることはできません。

 その遺伝子操作作物が本当に食べても安全なのか、環境に悪い影響を与えないかどうかは 何代も栽培された後か、遺伝子についての知見がもっと進んだ後でないと知ることはできません。

  • 各国の規制はどうなっているか
  • 日本

 遺伝子操作された農作物は、 大豆・じゃがいも・なたね・とうもろこし・綿・甜菜・アルファルファ・パパイヤ のみが国内での販売が許可されています。

 これらの作物を原料に使用した食品には、表示が義務付けられています。

  • アメリカ

 これまで米国では遺伝子組み換え食品に関する表示は義務付けられておらず、州によって規制が異なっていました。

 2017年から情報開示基準の策定が開始されました。

  • EU

 EUにおいて栽培が認められているのは遺伝子組み換えトウモロコシのみですが、ドイツ・フラス・ イタリアでは栽培が禁止されています。

 加工食品では、個々の原材料の0.9%以上に遺伝子組み換え作物が使用されているものに表示が義務付けられています。

最後に

 以上のように、国や地域によって遺伝子組み換え作物についての規制、表示義務は大きく異なっています。

 遺伝子操作作物は実用栽培開始からまだ40年足らずと歴史が浅く、その安全性については現在でも研究者によって評価が分かれています。

 地域ごとに対応が異なっているのが現状ですが、食の世界でも国際化が進んでいる現在では、 統一された規格を設けるのが望ましいと考えます。

                                                     以上