2020年に田んぼビオトープでの活動を開始し、6年が経過しました。これまでの活動で得られた知見を整理して1冊の本にしました。

 本書は、鳥取県南部町の自然共生サイト「南部町の里地里山ビオトープ」での実践をもとに、生物多様性と環境に関わるこれからの仕事について、新しい視点を提示する一冊です。

 「保全に関わりたい。しかし、それは仕事として成り立つのか。」そうした問いに対して、著者自身が現場で取り組んできた経験から、これから求められる役割を具体的に描き出します。

 人口減少が進む社会において、自然を守るだけでは活動は続きません。人が関わり、関係が生まれ、広がっていくことで、はじめて持続可能な取り組みになります。

 本書では、人と自然との関係の中から生まれる価値である「関係的価値」という考え方を軸に、地域の現場で見えてきた課題と可能性を整理しています。

 本書は、無償配布PDF、Kindle版、書籍(紙版)の3つの形式でお読みいただけます。
 まずはPDFで内容をご覧いただき、手元に置いて読みたい方は書籍版もぜひご利用ください。

・日本語kindle版はこちら(外部リンク)

・英語Kindle版はこちら(外部リンク)

本書の内容

 本書は、鳥取県南部町の自然共生サイト「南部町の里地里山ビオトープ」の実践をもとに、生物多様性と町づくりをつなぐ新しい視点を示す一冊です。自然は価値がある、と言われる一方で、日本では自然の多い地方から自然の少ない都市への人の移動が続いています。都市の駅周辺には緑が増えている一方で、地方では耕作放棄地や管理されない山林が増えています。このギャップはどこから生まれるのか?こうした疑問から始まり「自然の価値」を捉え直します。生態系サービスや道具的価値に加え、「関係的価値」に着目し、「関係設計」「関係構造」「関係開放度」といった考え方を提示します。人口減少が進む地域において、環境政策・地域政策・地域戦略の現場で求められる役割として「関係コーディネーター」を提案します。

その他の出版物

自然と人の関係設計 数式で捉える価値の現れ方

 「自然と人とつなぐ仕事」の続編として書きました。本書は、特に自然の価値が人との関係の中で立ち上がるという前書の考え方を数式で捉え、表現しています。数式で表現することで、これまで現場の試行錯誤でしかわからなかった結果を予めシミュレーションして、現場に入る前の手掛かりとなることを期待しています。本書のシミュレーションを行い前段階として、自然と人の関係を数式で捉えようとした試みをまとめたものです。

違ったまま、つながる 自然と人をつなが関係設計

 保全の活動を続けるなかで、ときには対立することがあります。本書は、「異なる価値観を持つ人たちは、一緒に同じ自然を守ることができるのか」という問いを出発点に、Boundary Object(境界対象)という考え方から「自然と人をつなぐ関係設計」を捉え直しました。価値観を同じにするのではなく、違ったままでも、同じ自然や調査結果などを介して活動の一部をつなぐことができるのではないか。保全の現場で、人と人との関係にどのように働きかけることができるのかを考えた本です。

自然と人をつなが関係設計の入門 自然と人の「あいだ」を見る

 「自然と人をつなぐ関係設計」について、これまでいくつかの本で書いてきた内容を入門書としてまとめました。本書では、田んぼビオトープや道路わきの植物など、身近な事例を通じて、自然と人との間にある見えない関係をどのように見つけるのかを紹介しています。自然を守っているのは誰なのか。自然を支えている関係とは何か。また、その関係が失われるとどうなるのか。自然そのものだけでなく、自然と人との「あいだ」に目を向けながら、関係設計の基本的な考え方を整理しました。関係設計に興味を持つ方に読んでいただけると幸いです。

謝辞

本書の執筆にあたり、これまでの活動を支えてくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。

私たちは、里山の保全を「仕事」として成り立たせたいという思いで、試行錯誤を重ねながら取り組んできました。その歩みの中で、多くの方々に支えられてきました。

現地を訪れ、関わってくださった皆さま。
実践する姿を示し、道を拓いてくださった皆さま。
日々の営みの中で地域を支えておられる皆さま。
活動に協力してくれた学生や先生方。
そして、制度や仕組みの面から支えてくださった行政の皆さま。

その一つひとつの関わりが、私たちの活動を前に進めてくれました。

本書に記した内容は、決して一人で成し得たものではなく、こうした多くの方々との関係の中から生まれたものです。

ここに、これまで関わってくださったすべての皆さまに、深く感謝申し上げます。

2026年4月2日

一般社団法人里山生物多様性プロジェクト 代表理事 野口浩二