田んぼビオトープから始まる

 「南部町の里地里山ビオトープ」は鳥取県の南部町下中谷(しもなかたに)にある集落を取り囲む自然環境です。2023年に自然共生サイトに認定され、2025年にOECMとして国際データベースに登録されました。自然共生サイトは「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する制度です。

ヒストリー

明治以前 タタラの歴史

かつてこの場所は砂鉄を原料としたタタラ場として栄えました。今でも田畑で鉧(けら)やくず鉄をいったタタラの跡を見ることが出来ます。

明治以降 農山村へ、ため池文化

明治になると産業構造の変化によって、農山村へと変わっていきました。水の少ない南部町で稲作を行うためにため池が各所に造られました。南部町には200か所のため池があり、県内で最もため池の場所です。

2020年 SDGsの広がり、生物多様性の保全

SDGSや気候変動をきっかけに、町の生物多様性を保全しようとする活動が生まれました。その一つとして始まったのが田を粗放的に管理する田んぼビオトープでした。

2021年 地域再生大賞の優秀賞を受賞

田んぼビオトープを使った保全と観光体験への取組が評価されて、ここで活動する(一社)里山生物多様性プロジェクトが地域再生大賞の優秀賞を受賞しました。

2022年 自然共生サイト認定相当

2022年に環境省が始めた新しい制度「自然共生サイト」に試行に参加し、全国56か所の認定相当地の一つに選ばれました。翌2023年に制度が始まると共に自然共生サイト「南部町の里地里山ビオトープ」として正式に認定されました。

2025年 OECM登録

集落を囲む1.8haの範囲がOECMとして国際データベースに登録されました。

暗くなった里山を日の光が差す場所へ

新陳代謝が進まなくなった森は、日が差さない暗い森へと変わってきています。私たちは再び手を入れることで明るい里山を取り戻したいと考えています。

土地所有者の思い

「里山の暮らしは当たり前の繰り返し」、春になれば畑に出て田を耕し、伸びた草を刈る。山に降った水が川を流れるように当たり前を繰り返す暮らし、それが里山の暮らし。それをずっと続けていくこと。

新しい世代の思い

2015年に南部町は町内全域が環境省の重要里地里山に指定されました。重要里地里山への指定は南部町の価値と魅力を教えてくれました。私たちが目指すのは里地里山と共に豊かに暮らすことです。

ネイチャーポジティブ社会の実現を目指して

紹介記事
  • 「生物多様性」による地域のブランド価値向上への挑戦ー一般社団法人里山生物多様性プロジェクト(鳥取県西伯郡南部町)の挑戦 2024.2.15 信用中央金庫 地域・中小企業研究所(PDF形式、外部リンク